暮らす場所

海辺の部屋で、シーブリーズに吹かれつつ、山下達郎の音楽でいい気分になりながらパソコンに向かっている。青みががった美しい瀬戸内の島々と、島を往復する船たちが見える。家の目の前は、ボートがたくさん並ぶマリンハーバーだ。

満ち潮になると、地元の人なのか魚釣りにくる。引き潮になれば、潮干狩りをしにくる。

海辺の部屋の反対側は、山と住宅街。近くには造船所がある。

私が今生活している場所は、時の流れがゆっくりとしている。

寂れた商店街もあり、それぞれの建物のつくりは木造で昭和を感じさせる。

おしゃれなお店や刺激的なものなどはない。

ここに暮らす人は、この地域の自然と交通便の良さと落ち着いた雰囲気に、安心感と満足感を持っているように見える。


これまでずっと街中に住んでいて、流行のものに囲まれ刺激的な街で遊ぶのが当たり前だった。3分歩けば、若者が新しいカルチャーを生み出し、自分の個性とセンスを披露し合う場所。10分行けば、デパートやブティックが並ぶ界隈。食べたい料理があれば街でなんでも食べれたし、欲しいものがあればなんでも手に入る。だから、この町にきた当初は物足りなさを感じ、粗探しをしてはぶつくさ文句を並べた。

最近、この小さな町の良さとこの町の暮らしのあり方に慣れてきた。何にもないけど、美しい自然と、時間を持て余しているここの人たちのスタイルが好きになった。


もともと造船業や漁業や医療で成り立っているような場所だったらしい。今は人気のない商店街も、昔は映画館があったそう。なるほど、確かに町にはこの町の「文化」があったという、そんな雰囲気が漂う。


この町の人は、自分の暮らすこの場所のどんなところが好きなんだろう。この町の人が大切にしていることってどんなことなんだろう。横着だけれど、この町の人々がこの場所の良さに気づき、少しでも愛着や誇りを感じながら暮らしていて欲しいと、余所者目線で思ったりする。それさえあれば、この町は生き続けるんじゃないかな。


今、この町含め、市は活気づけるために様々な施策を打って出ている。

「市を活気づける要はなにか」

まずは、そこに暮らす人々が自分たちの住む町が好きで誇りを持っていることだよね。


私は、今住む場所が好きだし、目の前に広がる山と海と島々といった景色が誇らしい。


日曜日のこの町は、今日も相変わらず時間を持て余している。

釣り糸をたらしている人、潮干狩りをする人、船に乗って出かける人。

私は、窓辺で海風に吹かれながら猫と共にパソコン触っている人。


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