サラバ!
「あなたが信じるものを、誰かにきめさせてはいけないわ」
父の出家。母の再婚。サトラコヲモンサマ解体後、世間の耳目を集めてしまった姉の問題行動。大人になった歩にも、異変は起こり続けた。甘え、嫉妬、狡猾さと自己愛の檻に囚われていた彼は、心のなかで叫んだ。お前は、いったい、誰なんだ。
読み終わる頃には、私の顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃでした。
生命力や愛のようなもので心が満たされ、生きる活力と芯を気づかせてもらえた一冊。
休学を取り、「人生」や「信じられるもの」について考える事が増えたのですが、
そんな中で、この小説と出会えて本当によかったと思いました。
あらすじ
1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。両親の間の決して明かされることの無かった秘密。
この本には、様々なものが詰まっている。マイノリティー、社会情勢、時代の流れ、ジェンダー、宗教、国籍、言語、、、。それらが絶妙に作用しながら、主人公の圷歩はじめ登場人物に影響します。ものすごく、さりげなくみえる一つ一つの出来事と本人の感情が人物の人生を作り上げ、その全てが愛おしいと思える広大な物語でした。共感できる部分や、普段受け流していた事象が持つ影響力に再度気づかされる。もう、この本を読むのが苦手な私が、熱中して読破してしまうくらい、感慨深く面白かったです。この小説は、この小説を読む人の人生に寄り添ってくれるような、そんな優しくエネルギーに満ち溢れた生きる希望をもたらしてくれる小説だと思います。
「この小説を読む人の人生に寄り添ってくれるような」と書きました。その理由は、読み終わった直後、頭の中の情景は物語ではなく、自分の21年間でみてきたシーンだったからです。自分ではない人の物語を読んでいるのに、自分の人生という物語を読んだ気がしました。
ちょうどこのぐらいの季節、3才の私は、風に舞う花吹雪をみて、「風さんありがとう」といったそうです。本を閉じた後、そのシーンが瞼裏で繰り広げられました。花吹雪に心底感動し、花吹雪を作り出してくれた風に心から感謝した3才の私。その心情や言動こそが、自分の原点だと気づき納得し、自分が信じてよいものなんだと納得しました。(これを書く今でも、その感覚を思い出して涙が溜まっているくらいの感動体験、、)
心から信じられるシンプルなものを自分の中から発見して、自分の良いところも悪いところも全てを自分が温かく抱きしめられる気がしました。ド恥ずかしい事を、今書いているのかもしれないんですけど、誰にどんな感想を言われても全くぶれないほどの率直な感想を書いています。
小説を読み終わると、その小説の登場人物に思いを馳せることが多いです。しかし、
この「サラバ!」を読み終わると、自分のこれまで紡いできた21年間の様々な感情や時間と、今の自分と、続くであろう未来の自分に思いを馳せました。
ミーハーな好奇心で読み始めた「サラバ!」でしたが、読み終わりにこんな感動と気づきがあるなんて!TT
自分の中で大切な本となるのだろうなと思います。
これまで、楽しい事幸せだった事混乱した事辛かった事絶望した事、いろんな事が私の21年間に詰め込まれています。その人生の最先端に、いつも私は立っていて、今この瞬間も人生の最先端に立ち続けている。そして、それは死ぬまでこの先も続いていく。その時間は、私が生きる道だと理解しました。
よし!!!!!
一瞬一瞬が好き!精一杯生きている!生きていく!
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